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Our Resarch / Education activity

薬物送達学研究室の研究・教育活動
 
Research

 現代医療において、薬は重要な役割を担っており必要不可欠な存在となっています。近年では、低分子薬物のみならず、核酸、抗体や生理活性タンパク質など中分子・高分子薬物も開発され、臨床応用されています。また、iPS細胞から分化誘導した細胞を薬のように生体に投与する細胞療法や組織構築も試みられています。このように、薬の開発は日進月歩で進化しており、様々な疾患の治療戦略にパラダイムシフトがみられています。この環境変化に迅速に対応し、次世代の医薬品開発につながる基礎研究を進めることがアカデミックの役割であります。そこで私たちは、以下のような次世代ドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発にチャレンジしています。

ナノテクノロジーを駆使したDDS
・イムノモジュレーションを誘導するナノ粒子製剤を利用したがん免疫療法の開発

​ マイクロフルイディクス(マイクロ流路)を用いて、免疫賦活化核酸を搭載した脂質ナノ粒子(粒子径:約60 nm)を新たに開発しました。この脂質ナノ粒子は、免疫賦活化核酸を効率よく形質樹状細胞に送達し、インターフェロン応答を誘導することができる優れた核酸キャリアであることが判明しました。そして、この脂質ナノ粒子を、がん細胞移植マウスに投与したところ、抗腫瘍免疫系を活性化し、がんの増殖を効果的に抑制できることが明らかとなりました。このことから、この脂質ナノ粒子が、効果的ながん免疫療法を構築するための、新たな免疫賦活化核酸デリバリーキャリアになるものと期待されます。

JCR Munakata.jpg

​Munakata L. et al. J. Control. Release313: 106-119 (2019)

マイクロバブルを利用した超音波DDS

 微小気泡(マイクロバブル)に超音波を照射すると、マイクロバブルの振動や圧壊が誘導されます。マイクロバブルを静脈内に投与して、超音波造影装置で造影すると、心臓の血流異常や微小血流の検出による固形がんの発見・診断が可能となります。また、治療用超音波との併用により、超音波を照射した組織の血管透過性が亢進され、低侵襲的かつ組織特異的なDDSへの応用が期待されています。しかし、これまでに利用されてきたマイクロバブルは、血中での安定性が悪く、血中からの消失が早いという欠点がありました。そこで私たちは、マイクロバブルを構成している外殻成分に着目し、外殻成分の最適化を行いました。私たちの開発したマイクロバブルは、ユニークな外殻成分から構成されているため、このマイクロバブルに関する特許を出願し、超音波DDSを医療応用するために大学発ベンチャー会社を立ち上げました。現在、このマイクロバブルと超音波の組み合わせによる診断・治療システム(超音波セラノスティクス)の開発を進めています。

超音波DDSの医療応用に向けて
・血液脳関門オープニングによる脳内遺伝子・薬物デリバリー法の開発

 マイクロバブルへの超音波照射によるマイクロバブルの振動や圧壊を脳内の毛細血管内で誘導し、血液脳関門を一時的にオープニングして脳内への薬物デリバリー効率の向上を図ることができます。この方法は、物理的なメカニズムで血液脳関門をオープニングできるため、原理的にどのような薬物でも脳内にデリバリーすることが可能となります。現在、脳にダメージを与えずに効率よく薬物を脳内にデリバリーできる超音波照射条件やマイクロバブル構成成分の最適化を行っています。

Graphical Abstract Omta.jpg

Omata D. et al. J. Control. Release. 311-312: 65-73 (2019)

・腫瘍血管オープニングによる抗がん剤デリバリー促進法の開発
 膵臓がんなどの難治性がんでは、がん組織内の新生血管の密度が低く血流量が乏しいことが知られています。また、他のがんで見られるような血管透過性の亢進も認められないため、化学療法の効果も低いことが報告されています。そこで私たちは、抗がん剤のがん組織へのデリバリー効率を向上するため、マイクロバブルと超音波の併用による難治性がんに対する化学療法の効果増強に関する研究を進めています。これまでに私たちは、骨肉腫細胞を移植したマウスにおいてマイクロバブルと超音波照射をドキソルビシンでの治療に併用することで、がんの治療効果が劇的に増強し、ドキソルビシンの副作用発現を抑制できることを明らかにしてきました。この超音波DDSは、様々ながん種の化学療法に応用できると考えています。

・超音波がん温熱免疫療法の開発
 マイクロバブルに強度の高い超音波を照射すると、マイクロバブルの振動や圧壊が激しくなり、超音波の機械的・熱的作用を増強することができます。この現象をがん組織内で生じさせると、機械的作用でがん細胞を直接傷害したり、加熱作用でがん組織内の温度上昇を誘導することができます。これにより、がん細胞が効果的に傷害され、がんを治療できることができます。また、このような方法で傷害した場合、がん細胞から効率よくがん関連抗原やネオアンチゲンが放出されるとともに、危険因子などの免疫賦活化分子による抗腫瘍免疫の活性化が期待できます。実際に、担がんマウスをマイクロバブルと強度の高い超音波を組み合わせて治療した場合、抗腫瘍免疫の誘導による効果的ながん治療が可能になることを見出しました。このことから、マイクロバブルと超音波の組み合わせは、DDSへの応用のみならず、新たなメカニズムに基づく超音波がん温熱免疫療法の構築にもつながると期待されます。

 上記の超音波DDS研究は、薬学の領域を超え、工学的なアプローチの組み合わせが必要な領域横断的な研究です。そのため、異分野技術の融合が必要不可欠です。そのため、当研究室では、国内外の様々な分野の研究機関と協力して研究を進めています。

Lab. Seminar&Journal Club

 当研究室では、ラボセミナーや論文紹介セミナー、ハイレベルな雑誌からラボの研究に関連する研究論文の概要を紹介するSeasonal Topicsセミナーなどを定期的に開催しています。

​ 参加を希望する方がおられれば、CONTACTページからご連絡ください。

Education

帝京大学

1年生 夢のDDS

(医学部・薬学部、医療技術学部:共通選択科目)

1年生 薬学への招待2(薬学部)

3年生 生物薬剤学(薬学部)

4年生 薬物動態制御学(薬学部)

5年生 薬学統合演習1(薬学部)

6年生 薬学統合演習2 (薬学部)

6年生 薬学総合講義2 (薬学部)

6年生 薬学総合講義4(薬学部)

     実習1、実習9、実習10(薬学部)など

東京農工大学(非常勤講師)

​ 1年生 臨床医学概論(工学部)

教育
Lab Seminar Journal Club
Research
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